夜道に似合う車を、探していた。
ある冬の帰り道、コンビニの駐車場でふと視界に入ったクルマがあった。輪郭のシャープさと、どこか人懐っこい光の表情。新型「ソリオ バンディット」。
その名は知っていた。けれど、自分の人生に必要なクルマとして想像したことはなかった。
しかしその夜、なぜか目が離せなかった。コンパクトな車体が、薄暗い街灯の下で静かに光っていた。まるで「ただの道具じゃない」と、何かを語りかけるように。
新型バンディットは、何を変え、何を残したのか──。それを知りたくて、調べるうちに気づいた。「このクルマ、少しだけ“人生”に寄り添ってくれるかもしれない」と。
エクステリア|都会にも似合う“夜の輪郭”
新型「ソリオ バンディット」は、いわゆる“ファミリー向け”の枠組みから少しだけ踏み出している。その意志は、外観の造形からも伝わってくる。
フロントマスクには、メッキとブラックのコンビネーションが効いている。派手さではなく、陰影の美学。上質さと静けさを両立させるようなデザインだ。グリルの奥行きやバンパーのエッジが、ライトに照らされたときに立体感を際立たせる。都会の夜、その輪郭は確かに風景の一部になっていた。
横から見ると、全高がありながらも腰高感は薄い。コンパクトカーの軽快さとミニバン的な包容力を両立させたバランス。日常を走るに足る、落ち着きと誠実さをまとっている。
そしてなにより、後ろ姿がいい。ハイブリッドバッジと細めのリアコンビランプが、さりげない先進性を語っている。主張しないけれど、忘れられない──そんな“後ろ姿の美学”がここにはある。
パワートレイン|新型1.2Lエンジン+マイルドハイブリッドの静けさ
「聞こえない加速」が、ある。新型「ソリオ バンディット」が搭載するZ12E型1.2L直列3気筒エンジンは、そんな感覚をもたらしてくれた。
エンジンが始動しても、車内は静かだ。むしろメーターの表示が変わって初めて「動いた」と気づくほど。アイドリングのざわめきは影をひそめ、静かな住宅街にもすっと溶け込む。
走り出せば、マイルドハイブリッドが滑らかにアシストする。加速の立ち上がりは唐突ではなく、なめらかにトルクが伸びていく。山道を攻めるわけではないが、信号の先や合流の一瞬で「このクルマ、ちゃんと考えて加速するな」と感じた。
WLTCモードで22.0km/Lという燃費も、数字だけでなくその“走りの静謐さ”が裏付けている。音で語らず、振動で誇らず、ただ必要なだけ前に進む──それは日常のなかでこそ価値を持つフィーリングだ。
安全装備|“気づき”の精度が、日常を守る
運転中、一瞬の「気づき」が命を分ける──そんなことは、きっと誰もが知っている。けれど、いつも完璧に気づけるわけではない。だからこそ、車側が“先に気づく”という技術には、安心という以上の意味がある。
新型「ソリオ バンディット」には、デュアルセンサーブレーキサポートIIが全車に標準装備されている。カメラとレーザーで前方を常に監視し、衝突の危険があれば自動でブレーキが作動する。
さらに、アダプティブクルーズコントロール(ACC)には全車速追従+停止保持機能も。高速道路での長距離移動や渋滞時のノロノロ運転など、ドライバーの“疲れやすい場面”を優しくサポートしてくれる。
ブラインドスポットモニター、リヤクロストラフィックアラートといった横・後方の検知機能も充実。もはや「ぶつけない」ではなく、「ぶつからせないための共同作業」へと進化している。ドライバーが気づける前に、クルマが目を配る──この精度が、日常のなかで静かに命を守ってくれる。
室内と快適性|「車内時間」が愛おしくなる設計
ある種のクルマは、「移動手段」ではなく「移動空間」として選ばれる。新型「ソリオ バンディット」の室内は、まさにその後者にふさわしい仕上がりだった。
まず、運転席に座ってすぐ感じたのは、開放感と安心感の両立。視界が広く、インパネのレイアウトも視線をさえぎらない。ステアリングの剛性感も絶妙で、ハンドルを握っただけで「この車、信用できる」と思えた。
電動パーキングブレーキとブレーキホールド機能は、都市生活者にとっての必須装備になりつつあるが、それがこの価格帯のクルマに標準的に備わっていることが嬉しい。信号待ちで、ふっと肩の力を抜ける瞬間──それは、短くても大事な「癒し」だ。
そしてスズキコネクト。スマホ連携、緊急通報、遠隔操作などの機能が、「もしも」に備えるだけでなく、「いつも」の快適さも引き上げてくれる。デジタルとアナログの中間にある“心地よさ”を、しっかり掴んでいる。
たとえば雨の日、子どもを迎えに行くとき。ちょっとした買い物帰りに寄り道したくなるとき。そんな、日々の“何気ない選択”を支える空間。──このクルマは、「車内時間」に優しさを灯してくれる。
価格とグレード|“日常の贅沢”を、現実に
新型「ソリオ バンディット」の価格設定は、抑制が効いている。それでいて、乗ってみると“想像以上の贅沢”が詰まっている。
主力グレードであるHYBRID MV(2WD)は、2,303,400円。4WDモデルでも2,648,800円に抑えられている。電動パーキングブレーキやブレーキホールド、アダプティブクルーズコントロールを装備しながら、この価格だ。
さらに、2WDにはオプションで全方位モニター付メモリーナビ(スズキコネクト対応)が22万円で設定され、4WDでは標準装備となる。つまり「ちょうどいいグレード」を選ぶだけで、想像以上に“いい時間”が手に入る。
日常の足として、信頼できる道具を選びたい。そのうえで、ほんの少しの高揚感や、移動中の静けさにもこだわりたい──そんな人に、このバンディットはちょうどいい。
価格と価値のバランスが取れたクルマというのは、スペック表だけでは測れない満足感をくれる。そしてそれは、毎日の暮らしのなかで、ふと気づくように染み込んでくるのだ。
まとめ|このクルマは、どんな人生に似合うか
新型「ソリオ バンディット」に乗って思ったのは、「無理をさせられない車」だということだった。
刺激を求めすぎず、速度を競うこともない。でも、だからこそ深く寄り添ってくる。自分の生活リズムや心の余白に、すっと馴染んでくれる。日常に溶け込むクルマというのは、実はとても希少だ。
峠を攻めなくてもいい。高速を飛ばさなくてもいい。ただ、静かに、確かに、暮らしの一部になってくれる。買い物の帰り道、誰かを迎えに行く夜、荷物をたくさん積んだ週末。そんな「なんでもない日々」に、このクルマはよく似合う。
そして時々、ふと立ち寄ったカフェの窓から、自分の車を眺めたとき。ああ、いいクルマを選んだな──そう思える瞬間が、きっと来る。
新型ソリオ バンディット。それは、“走る歓び”を取り戻すのではなく、“走る理由”を静かに思い出させてくれる一台だった。