2026年7月、約16年ぶりの全面刷新を遂げて登場した日産の最高峰ミニバン、新型エルグランド。
発表直後から「欧州の最新プジョーに似ている」「デザインがカッコ悪い」といった賛否両論がSNSを中心に巻き起こっています。
結論から言えば、プジョー(特に新型3008等)に似ていると言われるのは「グリルとボディの境界をなくすシームレスな造形」という世界的なデザイントレンドが共通しているためであり、ダサい・カッコ悪いという声は「歴代モデルの低重心フォルムからの急激な箱型化」に対するファンの戸惑いが主な要因です。
この記事では、新型エルグランドのデザインがプジョーと比較される技術的・造形的な背景、ダサいと評価されてしまう具体的な理由、サイズや価格のライバル比較、そして筆者が実車を確認・試乗して感じたリアルな価値まで、判断材料を徹底的に解説します。
Table of Contents
日産新型エルグランドのデザインは本当にプジョーに似てるのか?
新型エルグランドのティザーおよび実車画像が公開された際、自動車ファンの間で「プジョーの最新世代フェイスにそっくりだ」という指摘が相次ぎました。
これは単なる偶然の空似ではなく、世界の自動車デザインがEVシフトやデジタル化に伴って共有し始めた「面構成の新基準」が重なった結果と言えます。
具体的には、2025年7月にフルモデルチェンジを果たしたプジョーの次世代クーペSUV「新型3008」との間に、明確な造形手法の共通点が見られます。
- 境界線を排除したインテグレーテッドグリル:バンパーとグリルを明確に分節せず、ボディ同色のグラデーションや緻密なスリットで一体化させるシームレス構造。
- 極細LEDデイタイムライトと幾何学パターン:ライトユニットを薄型化し、フロントマスク全体にデジタルグラフィックを走らせる先進的表現。
- 無駄なメッキ加飾を抑えたクリーンサーフェス:従来のギラギラしたクロームメッキに頼らず、ボディ面の陰影だけでプレミアム感を主張するアプローチ。
プジョー3008は「ライオンの爪痕」を象徴する3本のスリットライトと前衛的なファストバックSUVスタイルを採用し、欧州の洗練されたエッジ感を強調しています。
対する日産の新型エルグランドは、日本の伝統工芸「組子(くみこ)」の幾何学パターンをフロントパネルに埋め込み、薄型リニアLEDと融合させています。
デザインのルーツ(フランスの野生美 vs 日本の伝統美)や車種カテゴリー(SUV vs ミニバン)は全く異なりますが、「フロント全体を一枚のデジタルなインターフェースに見立てる」というアプローチが一致したため、洗練された欧州車のような雰囲気を醸し出しているのが真相です。
新型エルグランドが「カッコ悪い」「ダサい」と酷評される4つの理由
新型エルグランドのエクステリアに対し、なぜ「カッコ悪い」「先代のほうが良かった」といったネガティブな反応が目立つのでしょうか。
その理由は、エルグランドが背負ってきた歴史的文脈とのギャップ、日産ラインナップ内での見え方、そして独特なボディラインにあります。
1. 「低重心&ワイド」から「背の高い箱型」への大転換による違和感
初代(E50系)や2代目(E51系)が確立した「キング・オブ・ミニバン」の威厳、そして3代目(E52系)が提示した「低全高・低重心のスポーティな走り」に愛着を持っていた熱心なファンほど、新型のプロポーションに戸惑いを隠せません。
新型の全高は1975mm(一部仕様は1965mm)に達し、先代E52系(全高1805mm〜1815mm)から一気に約160mm以上も高くなりました。
ライバルのトヨタ・アルファード(全高1935mm)をも上回る巨躯を得たことで、ミニバンとしての居住性は劇的に改善したものの、「エルグランド最大の武器だったスポーティで地を這うようなアグレッシブさが消え、普通の四角い箱車になってしまった」と感じる層から不満が噴出しています。
2. 「巨大なセレナ」「アリアの引き伸ばし」に見えてしまう高級感の希薄さ
日産は現在、ブランド全体で「タイムレス・ジャパニーズ・フューチャリズム」という共通のデザイン言語を採用しており、新型エルグランドにもEVのアリアやミニバンのセレナ(C28系)と通じるクリーンな顔つきが与えられています。
しかし、車両本体価格が689万7000円〜869万9000円に達するプレステージクラスであるにもかかわらず、「遠目で見るとセレナをそのまま縦横に引き伸ばしたように見える」という意見が少なくありません。
下位クラスのファミリーカーとの外観上の差別化が控えめで、700万円超を投じるオーナーが求める「一目で分かる圧倒的なステータス性」が伝わりにくい点が、ダサいという評価につながっています。
3. メッキを排した「組子グリル」が写真では平面的・のっぺりに見える
国内のLサイズ高級ミニバン市場では、長年にわたりアルファードやヴェルファイアのような「巨大で押し出し感の強いクロームメッキグリル」が高級感の象徴とされてきました。
これに対し、新型エルグランドは「The private MAGLEV(磁気浮上式リニアモーターカー)」をコンセプトに掲げ、ギラつきを排したフラットで静粛な表情を追求しています。
しかし、この微細な組子細工は、スマホ画面やWEBの2D画像で見ると陰影が潰れ、「ただの大きなプラスチック板がついている」「のっぺりしていて威圧感や押し出し感が足りない」と誤解されがちな構造をしています。
4. 「くの字」を描くサイド&リアパネルのアンバランスな造形
フロントマスク以上にネット上で厳しい指摘を受けているのが、車体を真横から見たときのサイドウインドウ後端の処理と、リアゲート周辺の立体形状です。
新型エルグランドのリアピラーからテールゲートにかけては、後方へ向かって「くの字」に尖るような独特のプレスラインが走っています。
この処理に対して、ユーザーからは「魚の尾びれに見える」「初心者マークを横倒しにして貼り付けたような歪みを感じる」「変形した牛乳パックのようでリアが落ち着かない」といった辛口なコメントが寄せられています。

写真と実車で印象が激変する理由と筆者の実車チェック
新型エルグランドのデザインは、WEB上の静止画と、自然光の下で実車を目の当たりにしたときとで印象が劇的に変わります。
筆者が実際にプロトタイプおよび展示車両を間近で観察し、触れて確認した実車のポイントは以下の通りです。
- 塗装の深みと組子グリルの彫刻感:写真では平面的に見えたフロントグリルは、実際には幾重にも重なる精密なスリットと奥行きがあり、光の当たる角度によって工芸品のような陰影が浮かび上がります。特に微小な擦り傷を自己修復する「スクラッチシールド」が施されたブラックや「至極(シゴク)」といった濃色系は、重厚な金属の塊のような佇まいを見せます。
- 灯火類が点灯した瞬間の圧倒的なワイド感:薄型のヘッドライトとグリル内蔵のシグネチャーランプが点灯すると、昼間の大人しい表情から一変し、リニアモーターカーが疾走するような鋭利で未来的な光の帯がワイド感を強調します。
- ボディパネルの剛性感とチリ(隙間)の精度:スライドドアやフェンダーの合わせ目(チリ)が極限まで詰められており、四角い箱型でありながら安っぽさは皆無で、欧州プレミアムサルーンに近い引き締まった硬質感が漂っています。
画面越しのフラットな画像だけで「ダサい」と切り捨てるのは早計であり、実車が放つディテールの質感はフラッグシップにふさわしい仕立てです。
新型エルグランド vs 先代(E52) vs トヨタ・アルファード|サイズ・価格・仕様比較
新型エルグランドがミニバン市場でどのような立ち位置にあるのか、先代モデルおよび宿敵であるトヨタ・アルファード(40系)とスペック・価格を比較して整理します。
- 先代エルグランド(E52系 / 3.5L・2.5Lガソリン)全長:4975mm全幅:1850mm全高:1815mmホイールベース:3000mm新車価格帯(当時):約370万〜560万円特徴:低重心で優れた高速操縦安定性を持つ一方、低全高ゆえに3列目シートの床が高く、大人が座ると体育座りのようになり荷室も狭いというパッケージングの課題を抱えていた。
- 新型エルグランド(2026年モデル / 1.5Lターボ e-POWER・e-4ORCE)全長:4995mm全幅:1895mm全高:1975mmホイールベース:3050mm車両本体価格帯:689万7000円〜869万9000円特徴:全長・全幅・全高ともに拡大。アルファードを凌駕する広大な室内空間と本格的な3列目居住性を獲得。1.5L発電用ターボによる経済性とモーター駆動の静粛性を両立。
- トヨタ・アルファード(40系 / 2.5Lハイブリッド・2.5Lガソリン)全長:4995mm全幅:1850mm全高:1935mmホイールベース:3000mm車両本体価格帯:540万〜872万円特徴:日本の機械式駐車場事情に配慮した全幅1850mmを死守。押し出し感の強い大型メッキグリルと豪華絢爛な内装で、市場の絶対王者として君臨。
先代E52系最大の泣き所だった「3列目の狭さ」を克服するため、新型は全幅1895mm・全高1975mmという思い切った巨体を採用しました。
都市部の全幅1850mm制限のあるタワーパーキング等への入庫は難しくなったものの、車内の広さと快適性においては完全にアルファードと互角以上のステージへ進化しています。
デザインの賛否を覆す走行性能!試乗で見えた工学的進化
外観の好みを超えて新型エルグランドを選ぶ最大の理由は、日産が培ってきた最新の電動化・シャシー制御技術にあります。
筆者が試乗した際に体感した、走りの決定的な進化ポイントを解説します。
- 第3世代e-POWERと新開発1.5L直列3気筒ターボ(ZR15DDTe):エンジンは発電に完全特化。インバーターとモーターを一体化した「5-in-1」構造により、静粛性とエネルギー効率が極限まで高められています。前後モーターのシステム最大トルクは500Nmを超え、2.5トンに迫る巨体をアクセルを踏み込んだ瞬間から滑らかに押し出します。排気量が1.5Lのため、毎年の自動車税が割安な点も実用上のメリットです。
- 電動4輪制御「e-4ORCE」と電子制御サスペンションの調和:前後2基の高出力モーターがトルクとブレーキを1万分の1秒単位で制御。さらに「インテリジェント ダイナミックサスペンション」が連動することで、加減速時に車体が前後に揺れるピッチングや、カーブでのロールが魔法のように抑えられます。ミニバン特有の「船のようなフワフワ感」がなく、同乗者が車酔いしにくいフラットな乗り味はアルファードに対する明確なアドバンテージです。
- 圧倒的なキャビン静粛性とラウンジ空間:アクティブノイズコントロール、遮音中間膜入り複層ガラス、ボディ各所への徹底的な吸音材配置により、高速走行時でも1列目と3列目で声を張らずに自然な会話が可能です。14.3インチ大型ツインディスプレイや全席ゼログラビティシート、BOSE製22スピーカーシステムの音響空間は、まさに動くファーストクラスです。
記者としての考察と今後の見通し
新型エルグランドのデザインに対する世間の賛否やプジョーとの比較議論は、日産が「先行するトヨタの模倣を断固として拒否した意思表示」の裏返しであると筆者は評価しています。
国内の高級ミニバン市場において、アルファード/ヴェルファイアの築いた「ギラギラとしたメッキの威圧感」という牙城はあまりにも強固です。
もし日産が同じ土俵に上がり、より巨大なメッキグリルを載せただけの車を出していたとしても、「アルファードの二番煎じ」として埋没していた可能性が極めて高いと言えます。
日産が選んだのは、プジョーをはじめとする欧州最新トレンドと通底する「知性的で無駄のないデジタル造形」と、日本古来の「組子細工の美意識」を融合させた、まったく新しいラグジュアリーの提案でした。
デビュー当初こそ「見慣れなさ」や「威圧感の不足」から酷評されがちですが、街中で実車が走り、静粛性やe-4ORCEによる極上の乗り心地が認知されるにつれて、評価は「品格と先進性を備えた大人のプレステージミニバン」へと成熟していくと考えられます。
押し出し感と分かりやすい豪華さを求めるならアルファード、他車と被らない先進的な電動フィーリングと上質な乗り味を愛するなら新型エルグランドという、極めて健全でハイレベルな選択肢が完成しました。
新型エルグランドのデザインに関するよくある質問
新型エルグランドは本当にプジョーを意識してデザインされたのですか?
プジョーを直接模倣・意識したわけではありません。日産の公式コンセプトは「The private MAGLEV(リニアモーターカーのような上質さ)」と日本の「組子」です。ただし、空力改善とEV時代を見据えて「フロントグリルとボディを一体化させる(シームレス化)」という最新のカーデザイン手法がプジョーの新型車(3008等)と軌を一にしているため、先進的な共通点として話題になっています。
新型エルグランドのサイズは運転しにくいですか?
全長4995mm、全幅1895mmという体躯は国内トップクラスの大きさであり、狭い路地や全幅1850mm制限のある古い機械式駐車場では取り回しに注意が必要です。ただし、ボンネットの見切りが良いスクエアな視界設計に加え、真上から周囲を見渡せる「インテリジェント アラウンドビューモニター」や「プロパイロット2.0」による高度な運転支援が備わっているため、実際の運転感覚は見た目以上に扱いやすく設計されています。
ダサいと言われないおすすめのボディカラーやグレードはありますか?
グリルの陰影とボディ面の引き締まりを最も美しく表現できる「ミッドナイトブラック」や、深みのある藍色系の「至極(シゴク)」といった濃色系カラーがおすすめです。また、より堂々とした風格やスポーティな押し出し感を求める方には、専用のエアロパーツとダーククローム加飾で洗練された存在感を放つカスタマイズモデル「AUTECH」が最適な選択肢となります。
まとめ
日産新型エルグランドが「プジョーに似ている」「カッコ悪い」と評される背景には、グリルレス風の最新デザイントレンドの採用や、先代のロー&ワイド路線から背高パッケージへ劇的に舵を切ったことへのギャップがありました。
しかしそのフォルムは、大人7人が真にくつろげる広大な室内空間と、e-POWERおよびe-4ORCEがもたらす異次元の静粛性・走行性能を追求した必然の結果です。
2Dの画面写真だけで良し悪しを判断するのではなく、ぜひディーラーで実車のディテールに触れ、滑らかな電動の走りを試乗で体感してみてください。

